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守屋麻美の現場から / Moriya’s insight
市場・業界動向 / Industry & Market Insights
2025-6-26
2025年6月、東京国際フォーラムで開催された「建設業働き方フォーラム2025」。国土交通省・助太刀・京都大学などが共催し、建設業界の人材確保や働き方改革をテーマに、制度・外国人材・キャリア支援・DX推進などに関する取り組みが紹介されるイベントとして実施されました。
私たちは「制度紹介の場」としてではなく、現場で積もった問いを持ち寄り、本音が語られ、未来が描かれる場として、このフォーラムに期待を寄せて参加しました。
会場では、制度紹介や各社の取り組みが語られており、それらは確かに積み重ねられてきた努力の証です。
しかし、だからこそ、次の問いが浮かびました。
安全性や技術力といった“従来の魅力”を超えて、
外国人材が人生を懸けても選びたくなるような“希望の構造”は語られるのだろうか?
私たちは、その問いを胸に、静かにあの場に座っていました。
建設業界は今、かつてない構造的な人材難に直面しています。
賃金水準、労働環境、成長のイメージ──そのすべてが曖昧なままでは、人は惹きつけられません。
そして、こうした表層的な課題の背景には、長年見て見ぬふりをされてきた“不都合な真実”が横たわっています。
現場任せの教育、待遇格差、構造的に報われにくい下請け構造── 企業にとっても、働く人にとっても、
私たちは過去10年にわたり、外国人エンジニアを育成し、日本の建設業界に届けてきました。
単なる紹介業ではなく、経営者の悩みや日本人従業員との待遇格差、賃金未払いトラブルにまで深く関わってきたからこそ、見えてきた現実があります。
日本の建設業に来る多くの一般労働者が「第一志望ではない」ということです。
韓国では、外国人労働者の社会保障負担が低く、税金も抑えられているうえに、日本より賃金水準が高いという現実。
年2回の韓国語試験(TOPIK)には多くの若者が列をなし、韓国で働くことを目標に努力を重ねています。
さらに2025年からは、これまで男性に限定されていた協定が女性にも拡大され、より多くの産業で人材獲得競争が激化することは避けられません。
シンガポールでは、就労許可(Work Permit)のオンライン申請が可能で、3日ほどで発行されるケースもあります。
さらに、給与が高く、住居や食費を企業が支給する場合も多いため、来日前にかかった費用を3ヶ月程度で返済可能という現実があります。
一方、日本では内定から入国まで平均で4〜6ヶ月を要し、来日前の借金返済には1年以上かかることも珍しくありません。
日本語学習という大きな壁もあり、生活コストは基本的に自己負担。
HoneStyleは、「紹介するだけ」の人材紹介会社ではありません。
選抜 → 教育 → 現場定着 → 成長支援までを一気通貫で設計する、育成前提モデルに取り組んできました。
建築・土木・構造といった専門性を軸に、構造理解、設計思想、業務設計、IT活用、自動化思考、データサイエンス、多言語スキルといった要素を総合的に育成。
結果として、建設業にとどまらず、製造・IT・物流など多分野で通用する実践的エンジニアを輩出しています。
こうした教育の取り組みの先に、私たちはある問いと向き合うようになりました。
「専門性 × IT・データサイエンス」を兼ね備えた人材が、それでもなお建設業を選ぶ理由はあるのか?」
「建設業でなければ達成できない、人生を賭ける価値あるチャレンジが存在するのか?」
私たちは、エンジニアを圧倒的に勝たせる教育を本気で設計し、 圧倒的なスピードで成長する覚悟を持った仲間たちが、今も毎日学び続けています。
だからこそ、企業や業界の側にも問いたいのです。
私たちHoneStyleはエンジニアに特化した人材育成と紹介ですが、今日のフォーラムのメイントピックである一般労働者も同じことが言えます。
技術を学び、日本語を身につけ、実力を発揮するようになったとき、 外国人労働者は「ここで働き続けたい」と思ってくれるでしょうか?
それを左右するのは、制度ではなく“暮らせる構造”です。
多くの方はまず単身で来日しますが、定着を見据えたとき、「家族と暮らす」という視点は避けて通れません。
配偶者や子どもを呼び寄せるには在留資格の申請や制度の壁があり、配偶者の就労が制限されるケースも多いため、「一馬力」で家計を支える覚悟と仕組みが求められます。
「この国で、自分ひとりの収入で家族を養えるのか?」──この問いに、正面から応える構造が求められています。
成長しても給与が上がらない。生活費に余裕がない。
そうした状況では、どれだけ制度を整えても、「暮らせない場所」には人は根を張れません。
教育支援、制度整備、受け入れ環境の整備──どれも大切です。
しかし、それだけでは足りない。
「報われる希望が見えるかどうか」。
その構造を本気で設計できるかが、今一番問われているのだと思います。
☑️ そもそも日本側は、どんな人に来てほしいのかを明確に定義できているのでしょうか?
☑️ 任せたい業務や、将来的に育ってほしい人物像から逆算して、ターゲットを絞った設計になっているでしょうか?
☑️ そのターゲットに「日本を選ぶ理由」を与えるストーリーが準備されているでしょうか?
☑️ 在住国では描けなかったキャリア、実現できなかった人生像──そうした差異の提示が伝えられているでしょうか?
☑️ 10年後、20年後に「この業界を選んでよかった」と思える未来像を、採用段階から提示できているでしょうか?
「建設業働き方フォーラム2025」で耳にしたのは、「日本の建設業は安全です」「技術力があります」「安定しています」といった何十年前から変わらない従来の魅力。
しかし、それで果たして、これからの国際人材マーケットで“本気でほしい層”に響いているのでしょうか?
そもそも、その“ほしい層”とは誰なのか──そこから問い直す覚悟があるのでしょうか?
構造の設計とは、小手先の制度ではなく、「どんな人材と、どんな未来を築きたいのか」を描くところから始まるはずです。
私たちは、ただ人を送り出して終わりにするつもりはありません。
未来を見据えて人を選び、育て、共に成長する関係性をつくっていきたい。
「制度を工夫すればうまくいく」という幻想ではなく、
構造から問い直し、信頼される産業と社会をつくっていくこと
── その道を、私たちは静かに、しかし確かな歩みで進めていきます。
教育を担う私たち、制度を設計する行政、現場を運営する企業── どこか一つでは変えられないからこそ、静かでも確かな連帯が必要なのだと、今、強く感じています。
本記事でお伝えしてきたように、HoneStyleでは「育てて届ける」ための教育スキームを軸に、構造思考・情報活用・多分野展開を見据えた人材育成に取り組んでいます。
制度や表層的なスキルではなく、業界横断で“選ばれる構造”を設計する── その挑戦の全体像をまとめた補足資料をご用意しました。
ご関心のある方は、ぜひ以下よりご覧ください。
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